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2001/08/27
帰島するには〜泥流に関する誤解〜
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先日の台風11号の影響により、日本列島各地で大雨が記録されました。三宅島の時間最大雨量は26mmで、降り始めからの総雨量は89mmでした。避難以降、これだけのまとまった雨量は初めてで、被害が拡大していないかと心配でしたが、泥流の発生(注1)は数えるほどしかなく、胸をなでおろしているところです。
しかし最近になって危惧すべき会話をあちこちで耳にします。
島民のみならず、都、村の行政関係者、果てはマスコミまでもが合言葉のように使う「ガスさえ収まれば帰島ができる」「早く大量の雨が降って、出るもの(泥流)がでてしまえば、帰島後に避難しなくても済む」という考えに対して、私は大きな疑問と、それによる弊害を強く危惧いたします。
前回(平成13年5月28日)の火山噴火予知連絡会の統一見解(注2)には、確かに「山麓に影響するような大きな規模の噴火の可能性は低い」とありますので、昨年8月のような爆発的な噴火の可能性は低いのかもしれません。
しかし島外避難から1年が経過した現在も、多量の有毒なガスを毎日数万トンの単位で噴出し続けています。近い将来これが収まる気配はありません。
いまの三宅島は、古記録に例のないことが進行中であるため、未来が予測できないのも仕方ない面もありますが、次回の火山噴火予知連絡会(定例:10月予定)の見解を注意深く見守りたいと思います。
さて、問題は「泥流」に関する誤認識です。
昨年の噴火により噴出した火山灰(降灰量)は、昨年8月末で約1600万トン(注3)と計算されております。仮に、近い将来(ここでは1〜2年と仮定)有毒なガスの放出量が減少して、島民の帰島が可能な段階になったとしても、三宅島の年間雨量を考えると、泥流は、かなりの年月(5〜10年)のあいだ続くと考えられます。
多くの島民は、昨年の避難前、たび重なる噴火と泥流による避難を経験しました。あのような苦労はもうしたくないという気持ちはわかる(私自身もそうでしたから)ものの、浅い知識と願望だけで「1回や2回の台風等の降雨によって、泥流が流れてしまえばもう避難はしなくて済む」という誤った考え方(発言や記載、表明)は、他者に伝達されることにより、過度の期待を与えることになります。結果として各島民の今後の生活設計にも、大きな影響を与えるものであります。
また、「流れるべきもの(泥流)は、被害があっても、早く流れてしまえばよい」という考え方は、泥流被害にあわれた島民の方々の感情を著しく愚弄するものです。「被害の拡大を防ぐために、河川工事を早期に完了して欲しい」というような、もう少しの心配りが欲しいものです。
現在、東京都は泥流被害のある(または想定できる)約20ヶ所の河川(沢)の整備工事を、早期に完了するように努力をしています。これにより、島民の家屋財産の保全を図るとともに、帰島できた際の生命の確保をする計画ですが、これでさえも完了は平成16年(つまり3年後)の予定です。しかし遅延する可能性が高い。
もっとも危険だと思えるのは、今後の人生設計において「帰島」を選択肢の中心に置かざるを得ない高齢者への影響です。
現在、村の職員(看護婦、保育園保育士、企業課職員など)の他に、一般島民も雇用して、高齢者の避難先に訪問して生活の把握などをする事業を展開していますが、その中には<話相手>の役割も含まれているようです。
そこでの会話で、お年寄りが精神的に不安だからといって「ガスが止まれば帰れる。泥流が出てしまえば終わるから、早く出てしまえばいい。もう避難生活はイヤだものね」などという言葉で慰めることは、一時的なその場しのぎの対応であり、今後に与える悪影響は計りしれないと私は考えます。
このように、現在のこれら事業は、専門的な知識のない人たちにより行われていますが、精神的なケアは、いまや専門職の専門的な知識と経験を有しなければ指導の難しい分野であり、そのやりかたによっては犯罪や事故などに繋がってしまう例を、毎日のようにテレビ報道などで耳にすることが出来ます。避難生活も1年を経過することからも、もう専門カウンセラーによるケアが必要な時期にきているのではないでしょうか?
いつかはガスの噴出も、泥流の発生も終わるのは間違いありません。しかし近い将来に、一日でも早い帰島を実現したいのなら、雨が降るたびに体育館などに避難する覚悟が必要です。
それとも、いつ終わるかもしれない噴火活動に関わる災害の終息を待ちますか?
| (注1)台風11号の影響(降雨)による主な泥流発生の状況 |
| 場所 |
延長(m) |
幅(m) |
最大厚さ(cm) |
| 大永井 |
76.0 |
5.7 |
3 |
| 御嶽神社前 |
100.0 |
6.5 |
7 |
| 空港前 |
23.0 |
8.0 |
2 |
| 三池バス停前 |
80.0 |
6.0 |
2 |
| 旧七島信金横 |
24.3 |
3.5 |
4 |
| 土佐林道入り口 |
10.7 |
6.7 |
12 |
| 椎取神社前 |
33.6 |
7.7 |
15 |
| 地獄谷 |
37.7 |
4.8 |
5 |
| 鉄砲場(阿古) |
10.5 |
6.0 |
60 |
| 今回は、鉄砲場に新しい泥流が発生した。 |
(注2)
三宅島の火山活動に関する火山噴火予知連絡会統一見解
http://www.kishou.go.jp/press/0105/28a/miyake.html
(注3)
8月29日までの降灰量
http://www.edu.gunma-u.ac.jp/~hayakawa/news/2000/miyake/topics/ash/mass.txt
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